二部形式と三部形式
約 15 分
この節のねらい
楽節がいくつか集まると、曲全体の形になります。対比と回帰という2つの原理から、二部形式・複合三部形式が組み立てられます。
- 二部形式と三部形式を、部分の数と回帰の有無から区別できる
- 単純二部形式と複合二部形式の違いを説明できる
- 回帰(A の再現)が聴き手にとって何をしているのかを説明できる
- 対比部分(B)が半終止で終わることが多い理由を説明できる
8小節の楽節は、まだ曲ではありません。曲になるには、楽節がいくつか組み合わさる必要があります。
その組み合わせ方を支配しているのは、驚くほど単純な2つの原理です。対比と回帰。違うものを出すか、同じものを戻すか。ほとんどの形式はこの2つの配分で説明できます。
二部形式 — 出して、対比する
二部形式は A と B の2つの部分でできています。A で提示し、B で対比する。それだけです。
バロック期の舞曲(アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ)は、ほぼすべてこの形です。それぞれの部分に反復記号が付き、A を2回、B を2回演奏するのが慣習でした。
二部形式で大事なのは、B が A と違うことです。同じ素材を続けるだけでは1つの長い部分にしかなりません。調を変える、旋律の方向を変える、リズムを変える。何かを対比させて初めて2つの部分になります。
複合二部形式 — 二部なのに、少し戻ってくる
二部形式には、少し込み入った変種があります。複合二部形式(ラウンデッド・バイナリー)です。
B の終わりで、A の素材が部分的に戻ってきます。
‖: A :‖: B A' :‖
A – B – A’ と3つ並んでいるので三部形式に見えます。しかし反復記号の切れ目は2つしかなく、B と A’ がひとつづきの後半として扱われます。だから二部形式に分類されます。
この形が重要なのは、ソナタ形式の原型だからです。前半で提示し、後半で展開してから主題に戻る。この設計が拡大したものがソナタ形式です。
単純二部形式と複合二部形式
確認: 1つめは A のあと B が来て、そのまま終わります。2つめは B のあとに A の冒頭が戻ってきます。最後に戻ってくるかどうかだけの違いですが、2つめのほうが「一周して帰ってきた」というまとまりが強く出ます。戻る手前で一度宙に浮くところに注目してください。
A(4小節)+ B(4小節)
確認
ある曲は A(8小節)– B(8小節)– A(8小節)の順で進み、B と A の再現がひとまとまりの反復区間になっていました。これは何ですか。
三部形式 — 出して、対比して、戻る
三部形式は A – B – A です。二部形式との違いは1つ、A が完全な形で戻ってくることです。
回帰が何をしているのかを考えてみます。B を聴いているあいだ、聴き手は A の記憶を保持しています。そこへ A が戻ってくると、記憶と実際の音が一致します。この一致が満足として働きます。
つまり回帰は、聴き手の記憶を報酬に変える仕掛けです。だから B が長すぎると効果が薄れます。忘れてしまったものは、戻ってきても嬉しくありません。
回帰がある場合と、無い場合
確認: 1つめは A – B – A で、最後に最初の形が戻ります。2つめは A – B – C で、毎回新しい素材が出てきます。同じ長さなのに、1つめは1つの曲として閉じ、2つめは終わりのない散歩のように聴こえます。戻ってくることが、まとまりを作っています。
最初の形が戻る
B が半終止で終わる理由
三部形式の中間部 B は、半終止で終わることが多くなります。これは偶然ではありません。
B を正格終止で閉じてしまうと、そこで曲が一度完結します。すると次に来る A の再現は「戻ってきた」ではなく「また始まった」に聴こえます。回帰の効果が消えるのです。
B を属和音で開いたまま終えると、聴き手は解決を待つ状態に置かれます。そこへ A が戻ってくると、再現そのものが解決になります。形式の設計と終止形の選択が、ここで直結しています。
確認
三部形式の B を、主調の正格終止でしっかり閉じました。何が起きますか。
単純と複合 — 階層がもう一段
三部形式には規模の違う2種類があります。
単純三部形式では、A も B も1つの楽節程度の大きさです。全体で24小節前後になります。
複合三部形式では、A 自体が完結した小さな形式になっています。A が二部形式で、B(トリオ)も二部形式で、そのあと A 全体が戻ってくる。階層がもう一段深くなります。
メヌエットとトリオ、スケルツォとトリオがこの形です。「トリオのあと、メヌエットをダ・カーポ(最初から)」という指示は、まさに A の回帰を指しています。
| A の中身 | 全体の規模 | |
|---|---|---|
| 単純三部形式 | 1つの楽節(8小節程度) | 24小節前後 |
| 複合三部形式 | それ自体が二部形式や三部形式 | 数十小節から百小節超 |
形式論が入れ子で考えられているのは、この階層があるからです。動機が楽句を作り、楽句が楽節を作り、楽節が部分を作り、部分が曲を作る。どの階層でも、対比と回帰という同じ原理が働いています。
形式ビューアで二部形式と三部形式を見比べる 「二部形式」と「三部形式」を切り替えて、中間部の終わり方が半終止になっていることを確かめてください 形式ビューア →ここまでは西洋クラシックの形式でした。次の節では、ブルースとポピュラー音楽の形を扱います。原理は同じですが、区切りの置き方と反復の考え方が違います。
練習問題
答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。
- 1
二部形式と三部形式を分ける決定的な違いはどれですか。
- 2
複合二部形式(ラウンデッド・バイナリー)の特徴はどれですか。
- 3
三部形式の B(中間部)の終わりが半終止になることが多いのはなぜですか。
- 4
ハ長調の中間部が、最後の2和音 F から G で終わりました。この終わり方はどれですか。
- 5
単純三部形式と複合三部形式の違いはどれですか。
到達確認
次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。