neirocca sound-first music theory

二部形式と三部形式

約 15 分

この節のねらい

楽節がいくつか集まると、曲全体の形になります。対比と回帰という2つの原理から、二部形式・複合三部形式が組み立てられます。

  • 二部形式と三部形式を、部分の数と回帰の有無から区別できる
  • 単純二部形式と複合二部形式の違いを説明できる
  • 回帰(A の再現)が聴き手にとって何をしているのかを説明できる
  • 対比部分(B)が半終止で終わることが多い理由を説明できる
この節の内容
  1. 二部形式 — 出して、対比する
  2. 複合二部形式 — 二部なのに、少し戻ってくる
  3. 三部形式 — 出して、対比して、戻る
  4. B が半終止で終わる理由
  5. 単純と複合 — 階層がもう一段

8小節の楽節は、まだ曲ではありません。曲になるには、楽節がいくつか組み合わさる必要があります。

その組み合わせ方を支配しているのは、驚くほど単純な2つの原理です。対比回帰。違うものを出すか、同じものを戻すか。ほとんどの形式はこの2つの配分で説明できます。

二部形式 — 出して、対比する

二部形式は A と B の2つの部分でできています。A で提示し、B で対比する。それだけです。

AB
図1: 二部形式の輪郭。前半で上がり、後半で違う動きをして閉じる

バロック期の舞曲(アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ)は、ほぼすべてこの形です。それぞれの部分に反復記号が付き、A を2回、B を2回演奏するのが慣習でした。

二部形式で大事なのは、B が A と違うことです。同じ素材を続けるだけでは1つの長い部分にしかなりません。調を変える、旋律の方向を変える、リズムを変える。何かを対比させて初めて2つの部分になります。

複合二部形式 — 二部なのに、少し戻ってくる

二部形式には、少し込み入った変種があります。複合二部形式(ラウンデッド・バイナリー)です。

B の終わりで、A の素材が部分的に戻ってきます

‖: A :‖: B  A' :‖

A – B – A’ と3つ並んでいるので三部形式に見えます。しかし反復記号の切れ目は2つしかなく、B と A’ がひとつづきの後半として扱われます。だから二部形式に分類されます。

この形が重要なのは、ソナタ形式の原型だからです。前半で提示し、後半で展開してから主題に戻る。この設計が拡大したものがソナタ形式です。

単純二部形式と複合二部形式

確認: 1つめは A のあと B が来て、そのまま終わります。2つめは B のあとに A の冒頭が戻ってきます。最後に戻ってくるかどうかだけの違いですが、2つめのほうが「一周して帰ってきた」というまとまりが強く出ます。戻る手前で一度宙に浮くところに注目してください。

A(4小節)+ B(4小節)

確認

ある曲は A(8小節)– B(8小節)– A(8小節)の順で進み、B と A の再現がひとまとまりの反復区間になっていました。これは何ですか。

三部形式 — 出して、対比して、戻る

三部形式は A – B – A です。二部形式との違いは1つ、A が完全な形で戻ってくることです。

回帰が何をしているのかを考えてみます。B を聴いているあいだ、聴き手は A の記憶を保持しています。そこへ A が戻ってくると、記憶と実際の音が一致します。この一致が満足として働きます。

つまり回帰は、聴き手の記憶を報酬に変える仕掛けです。だから B が長すぎると効果が薄れます。忘れてしまったものは、戻ってきても嬉しくありません。

回帰がある場合と、無い場合

確認: 1つめは A – B – A で、最後に最初の形が戻ります。2つめは A – B – C で、毎回新しい素材が出てきます。同じ長さなのに、1つめは1つの曲として閉じ、2つめは終わりのない散歩のように聴こえます。戻ってくることが、まとまりを作っています。

最初の形が戻る

B が半終止で終わる理由

三部形式の中間部 B は、半終止で終わることが多くなります。これは偶然ではありません。

B を正格終止で閉じてしまうと、そこで曲が一度完結します。すると次に来る A の再現は「戻ってきた」ではなく「また始まった」に聴こえます。回帰の効果が消えるのです。

B を属和音で開いたまま終えると、聴き手は解決を待つ状態に置かれます。そこへ A が戻ってくると、再現そのものが解決になります。形式の設計と終止形の選択が、ここで直結しています。

iiV
図2: 中間部の終わり。ii から V へ進んで属和音で開いたまま止め、A の再現を待たせる

確認

三部形式の B を、主調の正格終止でしっかり閉じました。何が起きますか。

単純と複合 — 階層がもう一段

三部形式には規模の違う2種類があります。

単純三部形式では、A も B も1つの楽節程度の大きさです。全体で24小節前後になります。

複合三部形式では、A 自体が完結した小さな形式になっています。A が二部形式で、B(トリオ)も二部形式で、そのあと A 全体が戻ってくる。階層がもう一段深くなります。

メヌエットとトリオ、スケルツォとトリオがこの形です。「トリオのあと、メヌエットをダ・カーポ(最初から)」という指示は、まさに A の回帰を指しています。

A の中身全体の規模
単純三部形式1つの楽節(8小節程度)24小節前後
複合三部形式それ自体が二部形式や三部形式数十小節から百小節超

形式論が入れ子で考えられているのは、この階層があるからです。動機が楽句を作り、楽句が楽節を作り、楽節が部分を作り、部分が曲を作る。どの階層でも、対比と回帰という同じ原理が働いています

形式ビューアで二部形式と三部形式を見比べる 「二部形式」と「三部形式」を切り替えて、中間部の終わり方が半終止になっていることを確かめてください 形式ビューア →

ここまでは西洋クラシックの形式でした。次の節では、ブルースとポピュラー音楽の形を扱います。原理は同じですが、区切りの置き方と反復の考え方が違います。

練習問題

答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。

  1. 1

    二部形式と三部形式を分ける決定的な違いはどれですか。

  2. 2

    複合二部形式(ラウンデッド・バイナリー)の特徴はどれですか。

  3. 3

    三部形式の B(中間部)の終わりが半終止になることが多いのはなぜですか。

  4. 4

    ハ長調の中間部が、最後の2和音 F から G で終わりました。この終わり方はどれですか。

  5. 5

    単純三部形式と複合三部形式の違いはどれですか。

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到達確認

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