neirocca sound-first music theory

音程 · 節 2

転回音程と複音程

約 13 分

この節のねらい

音程の上下を入れ替えると度数の和が9になり、長と短、増と減が入れ替わります。この規則には理由があり、完全音程が「完全」と呼ばれる理由もここで分かります。オクターブを超える複音程の数え方も整理します。

  • 転回音程の度数が「9 から引く」で求まる理由を説明できる
  • 転回で長⇄短、増⇄減が入れ替わり、完全は完全のままである理由を説明できる
  • 複音程を単音程に還元して名前を言える
  • 転回を使って、覚える音程の数を半分に減らせることを説明できる
この節の内容
  1. 転回とは上下を入れ替えること
  2. 度数の和は必ず9になる
  3. 種類は入れ替わる — 完全だけは変わらない
  4. 転回は覚える量を半分にする
  5. 複音程 — オクターブを超える音程
  6. 転回音程と和音の転回形はつながっている

前の節で、音程は「度数」と「種類」で決まると確認しました。この節では音程をひっくり返すと何が起きるかを見ます。

一見すると小手先の操作のようですが、転回は和音の理解にそのまま直結します。和音の転回形(第1転回・第2転回)は、この音程の転回の応用です。

転回とは上下を入れ替えること

転回(inversion)は、下の音を1オクターブ上げる(または上の音を1オクターブ下げる)操作です。2つの音の上下関係が入れ替わります。

C–E(長3度)を転回すると、C を1オクターブ上げて E–C になります。

長3度転回 → 短6度
図1: C–E(長3度)の転回は E–C(短6度)。使っている音名は同じで、上下関係だけが変わった

音名の集合(C と E)は変わっていません。それでも音程の名前は長3度から短6度に変わります。度数も種類も変わったことになります。

度数の和は必ず9になる

転回すると度数はどうなるか。規則は単純です。

元の度数 + 転回後の度数 = 9
転回後
1度8度
2度7度
3度6度
4度5度
5度4度
6度3度
7度2度
8度1度

なぜ9になるのか。前の節の「両端を含めて数える」がここで効きます。

オクターブ全体(8度)の中に2つの音があるとき、下の音から上の音までがa度、上の音から次のオクターブまでがb度だとします。両方の区間で境目の音を2回数えているので、a + b は 8 + 1 = 9 になります。数え方の約束から必然的に出てくる数字で、覚える必要のある数字ではありません。

確認

短7度を転回すると度数は何度になりますか?

種類は入れ替わる — 完全だけは変わらない

度数と同時に、種類も規則的に入れ替わります。

元の種類転回後
完全完全

理由は半音数で確認できます。オクターブは12半音です。元の音程が n 半音なら、転回後は 12 − n 半音になります。

長3度(4半音)→ 12 − 4 = 8半音 = 短6度 ✓ 完全5度(7半音)→ 12 − 7 = 5半音 = 完全4度 ✓ 増4度(6半音)→ 12 − 6 = 6半音 = 減5度 ✓

ここで完全音程が特別である理由が見えます。完全1度(0半音)と完全8度(12半音)、完全4度(5半音)と完全5度(7半音)は、互いに転回の関係にありながらどちらも「完全」です。前の節で「1・4・5・8 度だけ完全という言葉を使う」と説明したのは、この閉じた対称性を持つ4つだからです。

長短系(2・3・6・7度)は転回すると長⇄短が入れ替わるので、この対称性を持ちません。だから別系統の言葉が必要になったわけです。

転回すると響きはどう変わるか

確認: 1つめは長3度(C–E)。2つめはそれを転回した短6度(E–C)です。使っている音名は同じなのに、響きの印象が変わることを確かめてください。3・4つめは完全5度とその転回の完全4度で、こちらは印象の変化が小さく、どちらも安定して聞こえます。

4半音

確認

増2度を転回すると何になりますか?

転回は覚える量を半分にする

転回の実用的な価値は、覚えるべき音程の数が半分になることです。

耳のトレーニングで長6度を聴き分けるのが苦手な人は多いですが、短3度は比較的つかみやすい人が多いです。長6度は短3度の転回なので、「短3度をひっくり返した音」として捉え直せます。同じことが、

  • 長7度 ⇄ 短2度(半音のぶつかり)
  • 短7度 ⇄ 長2度
  • 短6度 ⇄ 長3度
  • 完全4度 ⇄ 完全5度

のすべてで使えます。2度と3度の4種類を確実に覚えれば、6度と7度は転回で導けるということです。実際の聴音の学習では、この方針が効率的です。

複音程 — オクターブを超える音程

ここまでは1オクターブ以内(単音程)を扱ってきました。それを超えるものを複音程と呼びます。

長3度長10度長9度完全11度
図2: 複音程。単音程に7を足した度数になる(3 + 7 = 10、2 + 7 = 9、4 + 7 = 11)

数え方は単音程と同じで、両端を含めて文字を数えるだけです。C4 から E5 なら10個数えるので10度です。

複音程は7を引くと単音程に還元できます(オクターブぶんを取り除く操作です。9ではなく7を引く点に注意)。

  • 9度 → 2度
  • 10度 → 3度
  • 11度 → 4度
  • 13度 → 6度

種類は還元しても変わりません。長10度を還元すると長3度、完全11度を還元すると完全4度です。

この 9・11・13 という数字は、ポピュラー音楽のコードネームでそのまま使われます。C9、Cadd9、C11、C13 の数字は複音程の度数です。なぜ 9th であって 2nd と書かないのか——それは実際にオクターブ上に積まれているからで、後のユニット(テンションコード)でこの記法の意味を扱います。

確認

完全12度を単音程に還元すると何になりますか?

転回音程と和音の転回形はつながっている

最後に、この節が後でどう使われるかを予告しておきます。

C メジャーの和音は C–E–G で、下から長3度と短3度が積まれています。この和音の低音を E に変えると(第1転回形)、E–G–C になり、下から短3度と完全4度が積まれた形になります。

この構造の変化を記述するのが、まさに音程の転回です。和音の転回形は、音程の転回の集まりとして理解できます。ユニット3「和音の構造」で正面から扱います。

音程計算ツールで転回を確かめる C–A(長6度)を出したあと、下の音を A、上の音を C にしてみてください。短3度になり、度数の和が9になることが確認できます 音程計算ツール → 転回関係を使って聴音の負担を減らす まず短3度と長3度を確実にしてから、6度に進んでください。「3度をひっくり返した音」として聴くと、6度の識別が急に楽になります 耳トレーニング →

練習問題

答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。

  1. 1

    長3度(C–E)を転回すると何になりますか。

  2. 2

    完全5度(C–G)を転回すると何になりますか。

  3. 3

    増4度(F–B)を転回すると何になりますか。

  4. 4

    C4 から E5 までの音程は何ですか。

  5. 5

    長9度を単音程に還元すると何になりますか。

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到達確認

次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。

協和と不協和