20世紀以降とポピュラー · 節 1
テンションとオルタード
約 16 分
この節のねらい
3度堆積を7thの上へ続けると9th・11th・13thが生まれます。どのテンションが使えるかを決めるのは何か、属七の上だけで変化音が自由になるのはなぜかを扱います。
- テンションを「7thの上に3度堆積を続けた音」として定義できる
- 9th・11th・13thを2度・4度・6度と区別して呼ぶ理由を説明できる
- 属七の上のオルタードテンション4種を挙げられる
- 長三和音や長7の和音の上で11thが避けられる理由を説明できる
U3 で和音を作ったとき、3度堆積を第7音で止めました。理由は特にありません。止めなければ、そのまま積み続けられます。
C の上に3度ずつ積むと C – E – G – B♭ – D – F – A。7音全部が乗ります。第7音より上の3音がテンションです。
なぜ 9th・11th・13th と呼ぶのか
D は根音 C から数えて2度上でもあります。それでも 9th と呼ぶのはなぜか。
オクターブ内に畳んだ位置ではなく、積み上げた順番を名前にしているからです。
同じ D でも、2nd として置くか 9th として置くかで役割が違います。
- 2nd(sus2 や add9 の下の方) — 根音のすぐ隣。根音と隣り合ってぶつかる
- 9th — 7th の上。7th があるので、その上に乗る自然な続きとして聴こえる
だから C(add9) と C9 は別の和音です。前者は C E G D で第7音が無く、後者は C E G B♭ D です。
| 記号 | 構成音 | 第7音 |
|---|---|---|
| Cadd9 | C E G D | 無し |
| C9 | C E G Bb D | あり(短7度) |
| Cmaj9 | C E G B D | あり(長7度) |
| Cm9 | C Eb G Bb D | あり(短7度) |
三和音からテンションまでを順に厚くする
確認: 同じ C の和音に、上から音を1つずつ足していきます。三和音は輪郭がはっきりしていて、7th が入ると次へ行きたくなり、9th で色が付き、13th で厚みが出ます。増えているのは上の音だけで、下の3音はまったく同じです。どこから「別の和音になった」と感じるかを自分の耳で確かめてみてください。
C E G
使えるテンションを決めるのは第3音
どのテンションでも自由に乗るわけではありません。制約は1つの原則から来ます。
和音の性格を決める音の半音上に、別の音を置いてはいけない。C の和音で性格を決めるのは第3音の E です。その半音上は F、つまり 11th。だから長三和音や属七の上で 11th をそのまま重ねると、和音の輪郭がぼやけます。こうした音をアボイドノートと呼びます。
逃げ道は2つあります。
- 第3音を省く — C11(C G B♭ D F)はこの形。長短の区別が消えて宙に浮く
- 11th を半音上げる — C7(♯11) なら F♯ になり、E との距離が全音に開く
短三和音では事情が変わります。C m の第3音は E♭ で、11th の F とは全音離れています。だから m11 は問題なく使えます。同じ 11th でも和音の種類で可否が変わるのはこのためです。
確認
Cmaj7 の上で 11th(F)を避けたいのはなぜですか。
オルタードテンション — 属七の特権
属七の上では、テンションを半音ずらして使えます。これがオルタードテンションです。
| 名前 | ハ調の C7 では | 元のテンションから |
|---|---|---|
| ♭9 | Db | 9th を半音下げる |
| ♯9 | D# | 9th を半音上げる |
| ♯11 | F# | 11th を半音上げる |
| ♭13 | Ab | 13th を半音下げる |
なぜ属七だけが許されるのか。属七はもともと解決を要求している和音だからです。第3音と第7音のトライトーンがすでに「次へ行きたい」と言っている。そこへ変化音を足しても、行き先は変わりません。緊張の量が増えるだけです。
安定しているはずの主和音に同じことをすれば、機能そのものが壊れます。オルタードは不安定な和音をより不安定にする操作なので、もともと不安定な和音の上でしか意味を持ちません。
ドミナントの緊張を段階的に上げる
確認: どれも同じ C の主和音へ解決します。1つめは普通の属七。2つめは ♭9 が入り、3つめは ♯9、4つめは ♯9 と ♭13 の両方が入っています。緊張が上がるほど、主和音に着いたときの落差が大きくなります。緊張を足しても行き先が変わらないことを確かめてください。どれも同じ場所に着きます。
素の属七
綴りが構造を示す
テンションの記譜には、U0 の異名同音の話がそのまま効いています。
C7(♯9) の ♯9 は D♯ と綴ります。鍵盤の上では E♭ と同じ音ですが、E♭ と書くと第3音の E と文字が重なり、「第3音を半音下げた短三和音」のように読めてしまいます。9th は根音から9度の位置なので、文字は必ず D でなければなりません。
ギターでよく使われる C7(♯9) の押さえ方は、E(第3音)と D♯(♯9)を同時に鳴らします。長3度と短3度が同居しているように聴こえるのはそのためで、この明暗の同居がブルースやファンクの手触りになっています。
確認
C13 の理屈のうえでの構成音は C E G Bb D F A ですが、実際に 11th の F を省くのはなぜですか。
テンションは3度堆積という枠の中で音を増やす方法でした。次の節では枠そのものを外します。緊張と解決で動く和声をやめて、1つの旋法の色を保つ和声の作り方です。
練習問題
答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。
- 1
C13 の構成音を、下から3度堆積の順に並べたものはどれですか。
- 2
C7(#9) の構成音を正しく綴ったものはどれですか。
- 3
長三和音や属七の上で11thをそのまま重ねると避けられるのはなぜですか。
- 4
C11 の構成音はどれですか。
- 5
オルタードテンションが属七の上でだけ自由に使えるのはなぜですか。
到達確認
次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。