neirocca sound-first music theory

4声体書法 · 節 2

声部進行の禁則(平行5度・平行8度)

約 16 分

この節のねらい

古典和声でもっとも厳しく避けられるのが、完全5度と完全8度の平行です。規則として暗記するのではなく、実際に鳴らして「声部が1つ消える」ことを耳で確かめます。

  • 平行5度と平行8度がなぜ禁じられるのかを、声部の独立という観点から説明できる
  • 4声体で検査すべき声部の組み合わせが6通りあることを説明できる
  • 隠伏5度・隠伏8度が平行と何が違うのかを説明できる
  • 短調で増2度の旋律進行を避ける理由を説明できる
この節の内容
  1. まず聴いてみる
  2. なぜ禁じられるのか
  3. 6通りすべてを確認する
  4. 反行の連続は扱いが違う
  5. 隠伏5度・隠伏8度
  6. 声部の交差と重なり
  7. 短調では増音程に注意する
  8. 検査しながら書く

4声体の規則の中で、もっとも有名で、もっとも厳しく守られるのが平行5度と平行8度の禁止です。

和声の教科書では規則として先に示されることが多いのですが、この節では順序を逆にします。まず鳴らして、それから理由を考えます

まず聴いてみる

平行5度がある版と、直した版

確認: どちらも V から I へ進みます。1つめはテノールとバスが完全5度を保ったまま一緒に上がっています。よく聴くと、その2声が別々の人ではなく1つの太い音に溶けて聴こえるはずです。2つめはテノールだけ行き先を変えたもので、4つの声部がそれぞれ別に動いているのが分かります。和音の名前はどちらも同じです。

テノールとバスが完全5度のまま平行移動

聴こえた違いが、この規則のすべてです。

なぜ禁じられるのか

4声体は4人が独立して歌っているという前提で書かれます。だから4つの声部は、それぞれ別の旋律として聴こえなければなりません。

完全5度と完全8度は、協和の度合いがもっとも高い音程です。ユニット1で見たとおり、この2つは2音が溶け合って1音のように聴こえる性質を持っています。

その音程を保ったまま2つの声部が同じ方向へ動くと、どうなるか。2声部がずっと溶けたままになり、独立した旋律として聴き分けられなくなります。実質的に声部が1つ減ってしまう、ということです。

VI
図1: テノールとバスが D3–G2(完全5度)から G3–C3(完全5度)へ、同じ方向に平行移動している
VI
図2: テノールを E3 に変えると、完全5度が長3度に変わって平行が解消する

6通りすべてを確認する

見落としがもっとも多いのがここです。外声(ソプラノとバス)だけを見て安心してはいけません

4声から2声を選ぶ組み合わせは6通りあります。

見落としやすさ
ソプラノ – バス目立つので気づきやすい
ソプラノ – アルト気づきやすい
ソプラノ – テノール離れているので見落としやすい
アルト – テノール非常に見落としやすい
アルト – バス見落としやすい
テノール – バス見落としやすい

内声どうしの平行は、譜面を見ても目立たず、聴いても外声ほど気になりません。それでも規則としては同じ扱いです。人間が手で確認するには数が多いので、この節ではチェッカーに任せます。

確認

平行8度を調べるとき、ソプラノとバスだけを見れば十分ですか?

反行の連続は扱いが違う

2つの声部が反対方向に動いて、それでも再び完全5度になることがあります。これを反行の連続5度と呼びます。

こちらは平行5度ほど厳しくありません。反対方向に動いていれば声部の独立は保たれているからです。ただし完全協和が続くことに変わりはないので、避けられるなら避けます。

禁則の強さには段階があるということです。同じ方向なら禁則、反対方向なら注意、という区別を持っておいてください。

隠伏5度・隠伏8度

平行とは別に、隠伏5度(直接5度)と呼ばれる動きがあります。

条件は2つです。

  1. 外声が同じ方向へ動いて完全5度(または完全8度)に到達する
  2. そのときソプラノが跳躍している

直前が完全5度でなくてもかまいません。到達したときに目立つことが問題なのです。ソプラノが順次進行で滑り込むなら目立ちませんが、跳躍して着地すると完全協和が強調されます。

これは禁則ではなく注意すべき動きとして扱われます。特に終止でソプラノが跳んで主音に着地する場面で起きやすいので、覚えておいてください。

声部の交差と重なり

声部の独立を守る規則はほかにもあります。

声部交差は、上の声部が下の声部より低くなることです。アルトがテノールより下に行くと、聴いている側は上下の関係を追えなくなります。

声部の重なりは、ある声部が、隣の声部が直前にいた位置を越えることです。交差はしていないのに、動きの上では追い越している状態です。こちらは交差より軽く、注意として扱われます。

短調では増音程に注意する

最後に、旋律の側の禁則を1つ。

2度以上の増音程で旋律を動かさないという規則があります。とくに問題になるのが短調です。

「2度以上」と限定したのには理由があります。同じ文字のまま半音だけ動かす増1度(A♭ → A のような半音階的半音)は、この規則の対象外です。歌いにくさの原因は「近い距離を不自然に広く跳ぶ」ことなので、隣の音へ半音で滑る動きはむしろ滑らかです。ユニット8の半音階的和声では、この増1度が基本の動作になります。

ハ短調の音階は C・D・E♭・F・G・A♭・B です(和声的短音階)。第6音の A♭ と導音の B が隣り合っており、この2音の間は増2度になります。

図3: 左は A♭ から B への増2度。右は A♭ を下へ導いて増2度を回避した形

増2度は歌いにくく、古典的な様式では避けられます。回避のしかたは決まっていて、第6音は下へ、導音は上へ導きます。A♭ は G へ下り、B は C へ上がる。両方が外側へ開くように動かせば、増2度は現れません。

確認

ハ短調で A♭ から B へ旋律を動かすと、どの音程になりますか?

検査しながら書く

規則を並べるとかなりの数になりますが、実際に書きながら指摘を受けると身につきが早くなります。

平行5度の実例をチェッカーで見る 「平行5度」の実例を読み込んでから再生し、そのあとテノールの音だけを変えて指摘が消える瞬間を確かめてください。規則を暗記するより、消える瞬間を体験するほうが確実に残ります 4声体チェッカー →

次の節では、これらの禁則を避けながら和音をつなぐ手順を扱います。禁則を後から探すのではなく、最初から起きないように書く方法です。

練習問題

答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。

  1. 1

    4声体で平行5度・平行8度を調べるとき、確認すべき声部の組み合わせは何通りありますか。

  2. 2

    ソプラノ G4・アルト B3・テノール D3・バス G2 の V から、ソプラノ E4・アルト C4・テノール G3・バス C3 の I へ進む4声体を検査すると、エラーは何件出ますか(数字で答えてください)。

  3. 3

    前の問題の I を、ソプラノ G4・アルト C4・テノール E3・バス C3 に変えました。検査するとエラーは何件になりますか(数字で答えてください)。

  4. 4

    隠伏5度(直接5度)とは、どのような動きのことですか。

  5. 5

    A♭ から上へ B までの音程は何ですか。

0 / 5

到達確認

次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。